- 海鉾かおり
なんで、こんなに仕事が好きなんだろう、って思うんですけど、好きなんです
今回インタビューをお願いしたのは海鉾かおりさん。これまでインタビューを実施した誰よりも明るく、インタビューも一瞬たりとも笑いが絶えない楽しい時間となりました。
「自分は自分の仕事が好き。どうしてかと聞かれても、わからない。ただ、面白くて楽しくて、好きなんです(笑)」と語る海鉾さん。今の会社の面接を受けたのは「時給がよかったから」と言いますが、面接で会社の代表と語るうちに、「私がやりたかった仕事がここにある!」と心を奪われたといいます。
「もっと若い世代に、この業界の楽しさが伝わればいいのに」と言う海鉾さんに、訪問介護の仕事内容、高齢者や障害のある方への接し方、仕事の醍醐味、仕事中に心がけていること、さらには笑顔で笑いを絶やさない海鉾さんの、人生も仕事も楽しむ極意をお伺いしました。
インタビュー実施日:2018年4月19日(らしくインタビュアー渡辺)
目次
■アルバイトの面接で社長と話していたら、「やっぱり私はこの仕事が好きなんだわ」って気づいてしまった
――今の仕事について教えていただけますか?
介護の仕事をしています。介護職は20歳から携わっていて、今、7年目になります。
始めた頃は高齢者の介護施設で働いていたんですが、いつの間にか、訪問の分野にきたんですけど……(笑)。一般的に「訪問介護」と呼ばれる仕事をしています。訪問介護は4年目になります。
今の訪問介護は高齢者だけではなくて、障害者の介護も含みます。実は、以前の介護施設で働いていた時期に、「この業界を離れよう」「介護の仕事を辞めよう」と思ったこともあるんです。でも、この訪問の仕事に出会って、改めて「私は介護が好きなんだ」と思ったんですよね。
――一度、辞めようと思った時に「私は介護が好きなんだ」と気づいた。
そうなんです。さらに高齢者の介護だけでなく、障害に関する介護に関わるようになって、「やっぱり私、介護、好きなんだわ」って思ったんです。でも、何が好きなのかは、自分でもよくわかってないんですけどね(笑)。
――ちょっと整理させてくださいね(笑)。最初の20歳の時に勤めていらっしゃったのは、高齢者のための介護施設……、いわゆる老人ホームみたいなところ?
そうです。20歳の頃に始めたのは、老人ホーム施設でした。そこには3年ほど勤務して、辞めました。当時は、夜勤が嫌で(笑)。
――夜勤があったんですね。
「私は、介護が嫌いなんだ!」って思ったんですよね。忙しくて眠れないし。「もうヤダヤダ!」と思って辞めたんですけど。「じゃぁ、仕事を辞めて何するか?」ってなった時に、特に何もしたくなくって。とりあえず食いつなぐために何かしなきゃ、って思った時、訪問介護の仕事って時給が高かったんですよ。施設だとシフトで動いているんですが、その訪問介護は1時間単位で人を募集していたので、「時給が高い! いいな!」って。「これで食いつなごう」と思ったんです。
――いやらしい言い方ですけど、ギャラ目当てだったんですね(笑)。
そうです、そうです(笑)。それで、この“ぶらんち”という会社に入って、いつのまにか正社員になっていたんですよね。
最初は本当にやる気がなくて、バイト感覚で働こうとしていたんですけど、代表に会って、喋って、気づいたら普通に働くようになっていたんですよね。
――私も代表の佐藤様にお会いしました。すごくパワフルな方ですよね。
そうなんです。パワフルなんですよ。面接で代表と話していたら、話しているうちに「やっぱり私は介護が好きなんだわ」って気づいてしまったんですよね(笑)。「私は、こういう介護をしたかったけど、施設ではできなかった」って。そんな話をし始めたら、止まらなくなっちゃったんですよね。それで、気づいたら、アルバイトではなくて、契約社員というか、正社員というか。そんな立場で働くことになっていたんです(笑)。
■上の世代のウケがいい。知らないおばあちゃんに声をかけられたり、ヤクルトもらったり
――もともと介護業界で働くことには興味があったんですか?
いや、それが高校生の時に、「もうこれ以上、勉強したくない」と思ったんですよね(笑)。そのまま働こうかなと思ったんですけど、それこそ周りの友だちはみんな、大学に進学しているわけですよね。私の姉も大学に進学していて、「高校から働くなんて」って言われて。「そっかー」って思ったものの、やりたいことも特にないし、卒業したらすぐに働ける仕事がいいなと思って探し始めたんです。保育士の仕事も思いついたんですけど、でも保育士ってピアノできないといけないな、と思って。「大学に通って、ピアノを習うのも嫌だな」と思って(笑)。「じゃあ、ちょっと上の世代を対象に、考えてみるか」って思って、介護の仕事を考えたんですよね。
私、同世代にはダメなんですけど、上の世代にはウケがいいんですね。じゃぁ、いけるかもしれない、って思って、それで短大に通うようになったんです。
――上の世代にはウケがよかったんですね。なんとなく想像がつきますけど(笑)。
ファーストフード店でお茶してたら隣に座っていたおばあちゃんから声かけられたりとか、ヤクルトもらったりとか、私、本当に上の世代にはウケがいいんですよ(笑)。
――出身はどちらですか?
埼玉です。
――埼玉の人は、フレンドリーで、すぐに隣の人に声をかける、っていうわけでは?
ないですね(笑)。
――ちらちら、おばあちゃんの顔を見ていたりとか?
ないです(笑)。私は視野は狭いので。突然、私の視界に入ってきて、話しかけられるんですよ(笑)。
――それはすごい。ご実家で、おじいちゃんとおばあちゃんと暮らしていた、とか?
それもないんです(笑)。
■認知症の方と接する中で、笑いが止まらなくなってしまった。そして、「この仕事、楽しい!」って思った
――すみません、話が脱線してしまいました。それで、短大に通われた、と。
そうです。短大時代、夏休みとか秋休みとか、休みの度に実習に出るんです。休みなのに勉強しに行くって、普通は嫌じゃないですか。でも、私は楽しかったんですよね。
実習先で、認知症の方々と接する機会があったんですけど……、こんな言い方しちゃいけないのかもしれないんですけど、楽しかったんですよね。急に突拍子もないことを言ったりとかするので、それがツボに入ってしまって、笑いが止まらなかったんですね。
――他の人だったら、それはセンシティブなトピックで、「笑っちゃいけないんじゃないか」とか思うと思うんですけど(笑)。
そうなんですよ、でも面白くて笑っちゃって。なんか、楽しいなぁ、って思ったんです。
――介護って、一般的に「大変そうな仕事」っていうイメージがある印象ですが、現場で思わず笑っちゃったんですね。海鉾さんの笑い声、素敵なので、その場がパッと明るくなったんじゃないかな、と思います(笑)。
ダメですよね、本当ならね(笑)。
――いえいえ。では、実習に出ても、「大変だ!」って思ったこともなかった?
子どもの頃から、性格的にあまり大変だっていうものがないんですね。勉強は嫌だけど、「辛い」とかそういう感情があまりなくて。私自身、怒るということもほとんどないんです。なので、介護の仕事も楽しくて、これは天職だったな、と今となってはつくづく思います。
■「こんな私でも必要としてくれる人がいるんだ」と思ったら、辞められない仕事になっていた
――施設の介護を経験して「嫌だ」と思って、訪問介護の業界にきて、「やっぱり介護が好き」ってなって。そこについて、もう少し教えていただけますか?
私のいた施設では、朝、起きたら、食事介助があって、排泄介助があって、また食事介助があって、排泄介助があって、入浴介助があって……とすべてがルーティンだったんです。どうしても人手が足りなくて、コミュニケーションをとる余裕がなかったり、高齢者の方が「外に行きたい」って言っても、「ちょっと待っててねー」っていう感じで、対応できなかったんですね。そんな中でも、早番の日なら、朝7時から夕方4時までの勤務なので、その勤務が終わってから、こっそり外に連れ出したりとかしていたんですけど、それも自分の首を絞めてしまうことにもなって。他にもやることがありますからね。
夜勤も大変で、それこそ人手が足りないと、夜勤の次の日も早番の勤務があったりして不規則な生活だったので、「これをこのまま続けていくのはマジで無理だ」と思ったんです。
一方で、訪問介護っていうのは、まったく別世界なんです。料理もしなきゃいけない、家事もしなきゃいけない、っていうイメージがあったので、私は訪問介護はできないなと思ったんです。
でも、時給が高かったので飛び込んでみたわけですよね(笑)。そしたら、身体障害のある方の排泄介助をしてほしいとか、寝たきりだったり足が動かない人だったりのケアをしてほしい、とか言われて、こんな私でも必要としてくれる人がいるんだ、と思ったら、辞められない仕事になっていたんですよね。
――訪問介護を始めた時のことも聞きたいんですが、「じゃぁ、この方のお宅に行ってきて」っていう感じなんですか? 一度の訪問はどれくらいの時間なんでしょう?
だいたい1時間が普通ですね。長いと5時間くらい、利用者さんのお宅にお邪魔して、いろんなお手伝いをするんですけれども。
4~5年前くらい、このぶらんちという会社が立ち上がったばかりの頃だったので、代表と代表の家族と、代表のお友だちがいたのかな…、そんな小さい規模だったんですよね。しかも、代表以外の2人は初心者だったはずです。そんな中で、私は一応、現場で3年間の経験があったので、まだ23歳くらいで、何も訪問介護についてわからなかったんですけど。「とりあえず行ってきて」って言われて、1人で行かされたんですよね。でも、それはそれで楽しかったですよね(笑)。
――すごいですね! 不安でいっぱいになりそうなのに、何でも楽しめる性格なんですね!笑)
「とりあえず行ってきます。怒られない程度にやってきます」って言って出かけて(笑)。私、怒られないのも得意なんです。
――わかる気がします。
初めて行ったお宅がゴミ屋敷だったんですよ。その中でほとんど動けない利用者さんのおうちだったんですね。すごく口うるさいおばあちゃんだったんですけど、オムツ交換をして、ご飯を食べさせて、っていうのをやってみたら、やっぱりなんだか楽しくて。「なんか汚い部屋だなぁ」って最初は思ったんですけど、やっていくうちに「なんか楽しいなぁ」って思ったんですよね。
――どこが楽しかったですか?
わからないですよ(笑)。私、全然、わからないんです。
でも、私、今でも、「施設に行って、端から端まで順番にオムツ交換したい!」って思うんですよね(笑)。本当に理由なんてわからないんですけど、とにかく好きなんですよね。
私、基本的に不器用なんですよ。手先も不器用なんです。でも、オムツ交換とかは、なぜかわからないけど、うまくできるんですよ。我ながら本当に上手にできるんです。料理も普段は全然できないんですけど、訪問した時にはなんかできるんです。
――神がかっちゃうんですかね。
どうなんでしょう。でも、料理は今は全然しないんですけどね。「私はお料理は苦手」って言っているんです。「専門分野は、そこじゃないぞ!」って言って、免除してもらっていますね(笑)。
■「私にできることがあれば、何でもやりますよって」言っていたら、部門長になっていた
――今はぶらんちには何人くらいが働いていらっしゃるんでしたっけ?
17人くらいですかね。入ってくるのも、辞めていくのも見てきましたね。
――アルバイトから正社員に変わって、何か仕事内容や役割は変わりましたか?
どうでしょう……。代表は当時から本当に忙しそうにしていたので、「私にできることがあれば、何でもやりますよ」って言っていたんですよね。利用者さんにスタッフが行く予定を書いたカレンダーを渡したりとか、スタッフのシフトスケジュールを管理したりだとか、請求書をチェックして回したりだとか。本当に、全部やっていましたね。
――大変でした? あ、「大変」って思わないのか(笑)。
まだ利用者さんも多くなかったので、ゆっくりゆっくりやらせてもらっていましたね。「これで大丈夫ですか?」って代表に確認しながら、仕事していたので、特に大変だった記憶はないですね。
――それが、徐々に規模が大きくなっていった、と。
そうですね。いろんな人が来て、「いろんな性格の人がいるなー」っていうのがわかって。
――入ってくる方は、経験者が多い? それとも未経験者が多いんですか?
どうですかね? 経験者の方が若干多いくらいですかね。
――その中で、どういう立場でいらっしゃるんですか? 今はもう現場にいらっしゃらない?
いえ、今でも現場には出ています。当時担当していた仕事の中でも、例えばシフト作成や管理も、今はもうノータッチで、違う人に任せています。相談されたら答える程度ですね。事務のスタッフさんも雇っているので、請求の手続きについては、最終チェックだけさせてもらっていますね。
――お名刺、拝見しましたが、肩書が「部門長」ですもんね。
あ、一応、部門長です(笑)。
――部門長って、どんな立場なんですか?
サービス提供責任者っていうヘルパーさんの上に、ケアマネさんという連絡を取り合う人がいるんです。その人たちの上にいるのが、この私です(笑)。
――結構、偉い立場、上のお立場なんですね! 責任重大!
そうなんです(笑)。資料の提出物は、国が絡んでいることも多いので、ちゃんと揃っているかどうかもチェックする立場です。もし、ちゃんとしていなかったら、お尻を叩いて、「やってください」と言って催促するのが役割です。書類についても、誰が提出していないかもちゃんと管理していて、本当に日々、催促している人みたいな感じですね。
でも、基本は私、訪問していたいんです。プレイヤータイプなんでしょうね。「訪問させてもらえないなら嫌だ」と言っていて、週5日、基本的には働くんですが、ほぼ毎日どこかしらのお宅にお邪魔しています。
――部門長としてのお仕事は?
その空き時間で、できる限りのことをやっていますね。
――採用の仕事もなさっているんでしょうか?
面接を担当するのは代表なんですけど、その日程調整や連絡は私が任されています。それも訪問の合間の時間に、うまく都合をつけてやっているイメージですね。一週間、あっという間ですよ。
■「年に一度、5連休をもらえます。それとは別に、私は毎月、3連休をもらっています」
――ぶらんちさんに応募するとしたら、どんな方が採用されやすいですか? 共通している性格とかはありますか?
本当にいろんな人が来るんですけど。暗いオーラの人はあんまりないですね(笑)。
――あの明るい代表が選ぶんですもんね(笑)。
あ、でも、かといって明るい人たちばかりでもないんですよね。個性的な人が多いんじゃないですかね。
――働き方についても教えていただけますか? 「休みが少ない業界なのかな」と私は思っていたんですが。
休みは取りやすいですよ。施設で働いていた頃は、それこそ連休を取ることもできなかったですけど、今は年に一度、5連休をもらえるんです。これはこの業界では珍しいですね。私はその5連休を使って、必ず海外旅行に行っていますね。それ以外でも、毎月3連休ももらっているんです。
――可能なんですか?
それも利用者さんにお願いをして、休ませてもらっているんです。基本的に、私は日曜日と月曜日が休みなんですが、日曜日の月曜日だけだと、月によっては8日しか休みが取れない場合があるんです。それじゃどこで休めるかというと、火曜日から金曜日までは決まった利用者さんのお宅に行くことになっているので、土曜日くらいしか休めないんです。
――そうすると、おのずと、土曜、日曜、月曜の3連休になる、と。
そうです。利用者さんにも、「ごめんなさいね、土曜日は休みますね」って話して。「他のスタッフさんにお願いしてくださいね」なんて言ったりして。
――そこはフラットなんですね。
大事だと思うんです、休みって。施設の頃は夜勤が大変で、「もう無理」って思った経験もあるので、私はちゃんと連休をもらって、海外旅行にも出かけて、また頑張る、と。
――ちなみに、海外はどちらに?
前回はハワイに行って。その前はタイに。その前はバリでした。先月は4連休をもらえたので、マレーシアに行ってきました。
――結構、海外旅行していますね!
それがないと……、辞めます(笑)。
――わかりやすい(笑)。
■「私がお邪魔することで少しでも利用者さんが楽しんでくれたらいいなって思います」
――利用者の方々との関係はどうなんですか? きっと、フラットなんだろうな、とは思うんですけれども。
そうですね、仕事として依頼されたことは、きちんとやります。でも、距離はすごく近いですよ。
毎日、会う方もいらっしゃるし、長い時間の付き合いになることもありますし。友だちというわけではないですけれど……、子どもだと思っている利用者さんはいるのかなと思います。娘とか、孫とかかもしれないですね。 私は私で、友だちに会いに行くというような感じですね。「今日はこんなことがあったんですよ」ってお宅にお邪魔するイメージです。
「仕事だ!」という感じではなくて。仕事だと気を使いすぎてしまうんですけど、私はそんな感じにはならなくて。「私にできることがあるなら、やりますよ」というスタンスで。
「今日の服、可愛くないですか」って、ゆるい感じでお邪魔しています。結構、それを楽しみにしてくれている利用者さんもいらっしゃるんですよね。「若い子の中でこういうのが流行っているんですよ」とか、そういうことをよく喋っていますね。私がお邪魔することで少しでも利用者さんが楽しんでくれたらいいなとは思いますね。
――自分の思うように動けない人にとって、楽しみって制限されてしまいがちですもんね。
だから、お邪魔したら、いろいろお話しをして、必ず、ひと笑いを入れるようにしていますね。
■私がいて、何かできることがあって、それが相手を幸せにできるならば、それほどに素晴らしいことはない
――ちょっと真面目な質問ですが、海鉾さんにとって、介護って何ですか?
何ですかね……。考えたことないですね。
――そこにあったものなんでしょうか?
ネガティブな聞き方をしてほしくないんですけど、本当に私、何もできないんですよ。生まれた時から、本当に自分には何もできないと思っているんです。だから、何かをして喜んでもらえるなんて嬉しいじゃないですか。「喜んでくれるんだったら、私、やりますよ!」っていう感じなんです。
――すごくシンプルですね。
私がいて、何かできることがあって、それで相手が幸せになってくれるのであれば、それほどに素晴らしいことはないじゃないですか。だから「介護ってなんですか」って言われると、何ですかね……、考えたことないんですよね。
本当に答えにならなくて申し訳ないんですけど、単純に楽しいんですよね。だから、辞める理由もないし、もし仮に今の会社を辞めたとしても、他で介護をやり続けると思うんですよね。
■「ぶらんち、ってどういう会社ですか?」
――「ぶらんち」という会社はどういう存在ですか?
“自由にさせてくれる”ですかね。私、すごく自由にやらせてもらっている気がします。いわゆる“会社”というものではないですね。結局、訪問介護って、1人で仕事するじゃないですか。お宅に訪問してからは、個人プレーなんですよね。自由、ですよね。
――これは私の偏見ですが、特に利用者さんのお宅で1人で仕事をすると、中にはひどいことをしてくる利用者の方もいらっしゃるんじゃないかな? だからこそ、「介護いじめ」というような問題が発生するんじゃないかな、と。そう思う一面もあるんですが、その辺りはいかがですか? 個人プレーで仕事をしているからこそ、「続けられない……」と悩みを抱えてしまう人もいるんじゃないかな、と思ったんです。
なるほど……、どうなんでしょうね、私はそんな利用者さんには会ったことがないですね。恵まれているんですかね?(笑)
あとは、基本的にぶらんちでは、1人の利用者さんに、2人から3人のヘルパーさんがつくんですね。だから、「今日はこんなことがあったよ」とか、「こんなことを言っていたよ」とか、そういった情報はヘルパー同士で共有することができるんです。
――普段の仕事の行き帰りはどうでしょう? みなさん、一度、オフィスに出勤して、お互いに顔を見てから、訪問に出かけるんですか?
そのまま直行する場合もあれば、お店に立ち寄ることもあります。ヘルパー同士が顔を合わせる機会というのは、なかなかないんですね。だからこそ、週に一度、金曜日に朝、集まって、1時間ほど情報共有をする時間と機会を設けています。
それ以外は訪問先から事務所に戻ってきた時に、「あ、久しぶりですね」っていう感じですね。あとは最近では、 SNS とかインターネット上の情報共有サービスとかを使って、そこでみんなで繋がって仕事していますね。
――それは安心ですね。ちゃんと、お互いに連携できる仕組みがあるということですね!
そうですね。入社直後はもちろん、自信を持ってもらえるまで一緒に仕事をしますしね。最初はどうしても緊張してしまうとは思うんですけど、慣れてしまえばなんとかなるんですよね。
――社長は、どんな方ですか?
人間らしいですね。何を考えているのかが、すぐ顔に出るからわかりやすいですよね(笑)。「あ、今、怒ってるんだな」とかっていうのも、見ていればすぐにわかりますしね。凹む時は凹んでいますしね。でも基本的にはパワフルですね。
――面接で話が止まらなかったというのはどういう状況でした?
「私は笑顔を忘れずに介護をしてきた」という話をして、「これからも、そうしていきたい」という話をしただけなんですよね。でも、何故か、そこから2人で話が盛り上がっていったんですよね。
――その時、代表に「この会社ではこういうことをしていきたい」というような話をしたんですか? あるいは、代表から「この会社は、こういう方向に進みたい」と言われた、とか?
申し訳ないけど、覚えてないんですよね(笑)。でも、なんだろう、介護について語れたことが楽しかったんですよね。すごく嬉しかったのを覚えています。「やりたい介護がここにある」って感じたんですよね。
――しつこく何度も聞いてしまうんですけど、何故、介護が好きか、っていうのはわからないんですよね?
わからないですね(笑)。本当に、なんで、こんなに好きなんだろう、って思うんですけど、ただただ好きなんです。楽しいんですよね。それは代表との面接でも語りながら、自分で気づいた思いです。
■介護の現場で心がけていること。帰る時に必ず手を触って、「またね」って言うこと
――介護の現場で、何か心がけていることはありますか?
そうですね。笑顔でいることと……、あ、あと、そうだ。帰る時に必ず手を触って、「またね」って言いますね。高齢者の方は特にそうなんですが、誰かと触れ合うってことがなくなってくるんですよ。だから帰り際には必ず手を握るようにしています。
反応が全然違うんですよ、手を握ると。「ハッ」となるんですよね。もちろん、オムツ交換とかで触られることはありますけど、そういう意味ではなく肌と肌が触れた瞬間に、「ハッ」っていう反応があって、それは大切にしたいな、と思って、心がけていますね。
年を重ねるごとに人から抱きしめられることってだんだん減っていってしまうのかなって思うから、だから自分でもよくわからないんですけども、昔から手を握るようにはしています。
――それは、いつから実践しているんですか?
学生の頃、実習に行った頃からはやっていましたね。多分、教わったんだと思います。「おやすみなさい」って言ってぎゅっとして帰ったりとか。そういうことを続けています。
――ちなみに、高齢の方と、障害を持っていらっしゃる方とでは、何か接し方が違うということはありますか?
いや、全くないですね。境目を考えたことがなくて。多分、私、誰とでもこんな感じになっちゃうと思うんですよ。本当に友だちに会っている感覚に近いかもしれないですね。
――嬉しいでしょうね、利用者の方も。「仕事できました」っていう感じではなくて、「今日はこんなことがあったんだよ」って部屋の中に新しい風が入ってくる感じって、いいと思うんですよね。あと、日本人って若くても、あまり触れ合わないじゃないですか。だからきっと嬉しいんじゃないかなと思いますよね。
■何故、介護の仕事がそんなに大変だと思われているのかが、私にはわからない
――「介護をスタイリッシュに」という言葉も事前情報として、代表から教えていただいたんですけれども、その真意も教えていただけますか?
あぁ、「介護をスタイリッシュに」って言っていましたね(笑)。
それこそ、介護のイメージっていうものがあると思うんですよ。私も「介護をやっている」って言うと、「大変でしょう」とか、「嘘でしょ、絶対やっていないでしょう」とか言われるんですけど、私は、本音で全然大変じゃないと思っているんですよね。「なんなら、そちらさんのお仕事の方が大変なんじゃないですか?」って思っちゃうんです(笑)。
どんな仕事も大変じゃないですか。楽な仕事はないと思っているし、でもその中でも私がやっている介護の仕事は大変だけど、みんなから感謝されるし、「ありがとう」って言われることもあるし、なんて幸せな仕事なんだろう、と思うんですよね。だから一般的に、なんでそんなに大変だと思われているのかが、私にはわからないんです。「もっと若い世代に、介護の仕事って、楽しいし、幸せな仕事なんだぞ、って浸透してきたらいいのにな」って思いますね。
――どうして、介護ってそんな大変そうなイメージがあるんですかね? わかります?
え、わからないです。何でですかね。何でだと思います?
――多分、やったことがないからでしょうね。経験がないからこそ、何が行われるかが見えないからこそ、不安だと思うんですよね。おしめ替えるのも、お風呂に入れるのも、ご飯を食べさせるのも、経験がないから怖い。喉がぜいぜいいっちゃったらどうしよう、とか、吐いちゃったらどうしよう、とかもありますよね。自分のおじいちゃんやおばあちゃんならまだしも、全然知らない人の命を預かるなんていうことに関しても不安があるんじゃないかな、と思います。あとは単純に「訪問介護」だと、行った先がゴミ屋敷だったらどうしようとか、そんなことも「介護は大変な仕事だ」っていう偏見につながるのかもしれないですね。
あぁ、なるほど。そういう感じなんですかね。
■もっと若い世代に、介護職を流行らせればいいのに、って思う
――介護業界については、どう思いますか? 今後、高齢者が増えていくのは明確じゃないですか。ニーズは増えていくと思うんですよね。
流行らせればいいのに、って思うんですよね。「若い人でも楽しくやってるよ」っていうことを、メディアが取り上げればいいのにな、って思います。でも、メディアが取り上げる時は、だいたい「人手不足で大変だ」とか、「殺人事件が起きた」とか、ちょっとネガティブなことばかりを報道しちゃうから、若い世代に「大変な仕事なんだわ」っていう風に思われるんだと思うんですよね。
例えばですけど、美容師だって大変な仕事じゃないですか。賃金だって、そこまで高くないって言いますよね。だけど、どこか煌びやかな世界だっていうイメージがあるから、みんな、やりたくなるんだと思うんですよね。私みたいに自由に楽しく介護業界で働いている人もいるんだから、それをもっと見てもらえる機会があったらいいなとは思いますね。
――あとは、真面目な人しかできない、っていうイメージがあるのかな、とも思います。
基本、下はズボンですけど、上は自由ですね。花柄のシャツを着たりとか、ピンクのニットを着たりとか、可愛いワンピースを着たりとか、いろいろな服装を楽しんでいますね。ミニスカートはさすがに履かないですけどね。
あと、私、これは大きな声で言えるんですけど、オールホワイトのコーデでも、絶対に汚さない自信があるんですよ。オムツ交換の時に、便がもし散らばっていても、絶対に私は自分の服を汚さないです。
――それは? 技術があるから、汚してしまう心配が要らない、っていうこと?
そうですね。ちゃんと技術があれば、自分の好きな格好で働いていても、汚したり、支障をきたしたりすることはないと思っています。だから、一応、エプロンをしたりもしますけど、基本的には自分の好きな服装と格好で働いていますね。
実は、そろそろネイルも解禁できるんじゃないかな、と思っているんですよ。やはり人によってはチャラチャラしているイメージを嫌がる方もいて、だから今はしていないんですけど。利用者さん本人は別に気にしなくても、その家族の方に「なんで、そんな格好しているの? 仕事なのに」って思われてしまうといけないので控えているんですけれども。利用者さんには、「ネイル、いいんじゃない」って言ってもらっています。徐々に固めていっている感じですね(笑)。
――素敵です。「海鉾さんなら、許しちゃう」っていう感じになりそうですね。「しっかり仕事はしてくれるから、いいじゃない」ってね。
■自分の意見をしっかり主張する利用者さんと接する中で、私も自分の意見を言えるようになってきた
――港区を中心に活動されていらっしゃるということですが、このエリアの利用者さんに共通していることはありますか?
私、他のエリアで働いたことがあまりないので、比較はできないんですけど、「すごいな」って思う人が多いですね。
――それは? 家の中のインテリアとか?
それもありますけど(笑)、発想にビックリすることが多いですね。「それ、買うんだ?」とか驚くことも多いです。
あとは、人に対して、ズカズカ言う利用者さんが多いですね。「これ、やりなさいよ」とか、「もっとこうしてちょうだいよ」とか、あっけらかんとおっしゃる方が多いですね。だから、「私も人にこうやって、あっけらかんと自分の思ったことを言ってもいいんだな」っていうのは思いました。
――あ、そう捉えたんですね。「なんてことを言うの?」ではなくて、「あ、こうやって言っていいんだ」っていう風に。
そうです。「勉強になりまーす」って言って(笑)。「私も言いたいことを言おう」と思うようになりました。
――素敵ですね。多くの人は、「あ、相手はお客様だった。私は仕える身分だった」みたいに思うんじゃないかな、と思ったんですね(笑)。でも、底抜けに明るく、「じゃ、私も言おう」って思える海鉾さんだから、きっと利用者の方ともフラットに接することができるんじゃないかな、って。
基本的に、言わないとわからないじゃないですか。利用者さんも「言わないとわからない」と思ったから、私に言ってくれたんだと思うし、言われたことについて変えられることであれば変えようと思うので。
そういう意味では性格が変わってきた気もしますね。利用者さんからいろんなことを言われる内に、自分の思うことを発信してもいいんだな、と思うようになって。それは仕事に関係する利用者さんだけでなくて、いろんな人間関係の中で言いたいことを言っていこうと思うようになりました。
■お酒の席で、父親が「かおりはよくやっているよな」って言った。すごく感動した
――海鉾さんは、友だちや家族といる時と、仕事をしている時とで、キャラクターみたいなものは変わりますか?
基本的には変わらないですね。
――そうでしょうね(笑)。裏表がなさそうだな、って思います。
でも、さすがに、仕事の時の方が、少しだけ真面目ですかね。友だちといる時は、基本的には甘えん坊ですね。3人きょうだいの末っ子なんですよ。だからなのか、「はい、やってー」って甘えて、お願いしちゃうことが多いですね。
――家族のみなさんは、海鉾さんが介護の仕事をしていることに対して、どう思っていますか?
あまりみんな、私に興味がないので(笑)。
――そんなことはないでしょう(笑)。
でも、父が初めて、「よくやってるよな」って言ってくれたことがあって。お酒を飲んだ席だったと思うんですけど、それはすごく感動しましたね。「かおりは介護の仕事をよくやってると思う」って言われたんですよね。
――ご自身では介護の仕事について家族の方にお話ししたりしますか?
いや、私は基本的に何も言わないです。友だちとかにもう仕事の話はあまりしないので、みんな、多分知らないですね。
――部門長だってことも?
特に言わないですしね。「まだ介護の仕事、続いているの?」って言われて、「やっているよ」って答えるくらいですね。
■今、すごく楽しいし、今が一番いいし、これがずっと続いていたらいいなって思う
――この先のことは、どう思っていますか? ずっと現場でやっていきたい、とか、この業界を変えていきたい、とか。何か考えていることはありますか?
何も考えてないですね(笑)。この先のことなんて考えてもわからないですからね。
――潔いですね(笑)。夢とかはありますか?
ない。ないんですよね。本当に考えていなくて。
――もう少し粘ります。30歳になって、35歳になって、どうなっていたいというのはありますか?
いや、それも何もないんですよ。なんとなく南国には行きたくて、いつかは移住したいんですけど(笑)。でも、それが本当にできるかどうかもわからないし、果たして本当に行きたいのかと訊かれたら、わからないですけどね。寒いのが苦手なんですよね(笑)。
――バケーションで行く国も、赤道近くの南国が多いですもんね(笑)。ちなみに、そういうところに行きたいと思うようになったきっかけはあったんでしょうか。
何もないですよ。ただ友だちについていくだけなんです。友だちが英語ができるので、一緒に行こうっていう感じで。だから行き先も、私が決めているわけじゃないんです。決めてもらって、「そこ、いいね!」っていう感じで、ついていく感じですね。
――最後にもしつこく聞きますね。今後のことは、特段、考えていはいない、と。
そうですね。すみません(笑)。
後悔というものもしたことがないんです。いつどうなってもいいんですね。だからこそ、何もないんです。だから、今、すごく楽しいし、今が一番いいし、これがずっと続いていたらいいなって思うんですよね。
――羨ましいですね、そういう考え方と生き方って(笑)。代表とはそういう話をしないんですか?
よく聞かれるんですよね。でも本当に何も考えられなくて。ちゃんと考えようと思ったこともあるんですけれども、本当に先のことをイメージできなくて。思い描けなくて。
――部門長として、こういうことをしていかなくちゃいけない、みたいなものはないんですか。
みんな、楽しく、ちゃんと仕事をしていればいいかな、って思っていて。私は自分自身が管理されるのが好きではないので、みんなもきっとそうなんじゃないかなと思うんですね。だから、最低限のことをお互いにしていければ、それでいいんじゃないかなと思うんですよね。
……ダメですよね、こんなんじゃ(笑)。
――いえいえ、すごくわかりやすくて、羨ましいです。
大丈夫ですか? ちゃんと記事になりますかね?(笑)
――私、本当に悔しいのは、このインタビューが映像だったらいいなと思って。すごく楽しそうに「介護っていいですよ」って言っている海鉾さんの姿や音声や表情を、文字だけでは伝えられないんじゃないかと思うんですよね。
あはは(笑)。
■好きなのは、餃子とハイボール。ワインは記憶を飛ばしてしまうので要注意
――部門長として、改めてお伺いしたいんですけど、どんな方が、ぶらんちでの介護に向いていますか? 利用者の方から人気が高く、支持される方って、どんな方なんでしょう。
やっぱり明るい人、ですかね。でも、なんていうんだろう、プライベートが充実している、っていうのも大事な気がします。趣味がある、とか、家族と仲がいい、とか、なんでもいいと思うんですけど、大事だと思いますね。
――海鉾さんは、プライベートはどう過ごしていますか? 長期休みは海外にいらっしゃるとのことですが、普段の休みやオフの時間の過ごし方は?
友だちと会っていますね。あと、食べるのが好きで、食べていますね。
――特に好きなのは?
餃子が好きですね。餃子は常に食べていますね。
――お酒も飲みます?
はい。でも、餃子はハイボールですよね。あ、だけど、ワイン飲んじゃうと、記憶がなくなってダメになっちゃうっていうのは有名な話ですね(笑)。
――「日々の疲れのリフレッシュ方法って何ですか?」って訊こうとしたんですけど、そもそも仕事で疲れているわけじゃないですもんね。
そうなんですよ。仕事は苦じゃないけど、でも友だちと会う時間も大切にしたいし、必要なので、ちゃんとプライベートの時間も確保したい、っていう感じなんですよね。
■世の中、面白いことだらけ。「生きているだけで幸せ」と思っているから、いつでも笑っている
――子どもの頃って、厳しくしつけられましたか? 「あれやりなさい」とか、「これやりなさい」とか言われて育ちました?
いや、言われた覚えはないですね。「○○しなさい」と言われたことは、多分、ないと思います。でも、なんとかなってきちゃっているんですよね。人として最低限のことさえクリアしていれば、いいかな、って。勉強だって赤点取らない程度にやっておけばオッケーかな、と。でもまぁ、恥はかきたくないですけどね。
――そこでしょうね! 先ほど「怒られない程度で行ってきます」とか「恥をかかない程度にやっています」とかっていうのは、「そこさえ回避できれば、あとはもう、楽しんだもの勝ちじゃん」っていう感じなんでしょうか。
そうですね。そうかもしれない。
だから、1位を目指すことはないですね。目立つことも好きではないので、なるべく身を潜めて生きていけたらなと思ってきましたし、今でも思っています。
――小さい頃はどんな子でした? 周りからはどう表現されていましたか?
「よく笑っている子」っていう感じですよ、多分。「笑い方だけ変わらないね」って言われますね。
――その頃から、笑っていたんですね。ちなみに、どうやったら世の中の面白いことを見つけられるんですか?
わからないですけど、何か笑っちゃうくらい面白いんですよね。よく「なんで、笑っているの?」って訊かれるんですけど、世の中、いろいろと面白いじゃないですか。
――素敵! よくわからないけど、素敵です(笑)。
確かに私の幸せの感じ方は、ハードルが低いと思います。すぐに幸せを感じちゃうんですよね。「これ、美味しい」とか、「これ、キレイ」とか、すぐに「あぁ、幸せだ」ってなるんですよね。言ってしまえば、「生きているだけで幸せなんじゃないか」と思っているんですよね。
「こんな私に、今日、会ってくれる友だちがいる! 幸せ! ありがとう!」っていう感じですね。
■自分が変わることで、何かを変えられることだったら、自分が変わればいいだけの話
――何かに悩んだりしますか?
しないです。
――しないんでしょうね(笑)。人が悩むっていう行為は理解できますか? ……ってすごく変な聞き方ですけど(笑)。
みんな、悩んでいるんだろうなっていうのはわかります。でも、何にそんなに悩んでいるのかがわからなくて、教えてほしいですね。友だちに悩み相談をされても、すぐに「じゃぁ、こうしなよ」って言っちゃうんですよね。それに対して、「それができたら悩まないよ」って言われることはよくあります。「あなたじゃないんだから」って。
――なるほど。そんな時は、どう思うんですか?
「あー、そっかー」って思うんですけど。「悩んでいるなら、自分が変わればいいだけじゃないのかな」とか思っちゃうんですよね。
――強いですね。
自分が変わることで、何かを変えられることだったら、自分が変わればいいだけの話だと思うんです。でも、相手がいることであれば、それは相手次第だと思うんですよね。
――対人関係の悩みに対しても、そう思います?
そうですね、基本的には、そう思っています。
■「すぐに『しょうがない』と思っちゃうので、私はあまり可愛くないと思います、恋愛したら」
――恋愛で悩んだことないんですか? 世の中ではよくある悩みじゃないですか。「どうして連絡してくれないの?」とか、「なんで電話一本くれなかったの?」とか。
「だってこないんだもんね」って。
――そんな風に思えます?(笑)
だって、そうじゃないですか(笑)。だから、悩まないですね。
――海鉾さん、現実を受け止めるのが早いのかもしれないですね。
そうですか?(笑) だって、私も連絡をしないこともあるし、だから相手も今は電話できない状態なのかな、って思うんですよね。「しょうがないよね」って。すぐに「しょうがない」と思っちゃうので、私はあまり可愛くないと思います、恋愛したら。
――「どうして自分を優先してくれないの?」とかって言ったりもしない?
言わないですね。「でも、私はこの日は会えますけど?」みたいな。「どうでしょうか?」みたいな。そんな風になっちゃうんですよね。
――ちょっと可愛い(笑)。それで、「その日は会えない」って言われたら?
「それじゃ、しょうがないかな」ってなっちゃいますね。「じゃぁ、友だちと餃子を食べに行こうかな」って。そういう感じなんですよね。
変ですかね、私?(笑)
――いえ、私がこれまでインタビューした人の中で一番あっけらかんとしている人だなと思います。素敵ですね。
■私はよく「笑ってごまかしちゃえ」って思っちゃう。これも若い内の特権かな、と
――ここまででインタビュー、1時間です。
普段、あまり自分のことを意識して語ることがないので、新鮮ですね。
――あまり自分のことを語らないですか?
意見を求められたら、答えますけどね。でも、「それはかおりだからできるんだよ」って言われて、「そっかー」ってなりますけどね。
――周りの人が「かおりだからできるんだよ」っていう心情は理解できます?
最近ちょっとずつわかるようになってきました。
例えば、私はよく「笑ってごまかしちゃえ」って思っちゃうんですけど、それで通用する人と通用しない人といるんだな、って思ったり。地元もそうだし、高校もそうだし、働いてからもそうだし、「あなただから許されてるよ」って言われ続けてきたんですよね。今の利用者さんもそうですけど、「あなただからしょうがない」って言われることが多々あるんです。
私としては「なんで許してくれたんだろう? ラッキーだなぁ」と思うんです。でも、「これがみんなの言う、『あなただからできるんだよ』っていうことか」とも思って。
――分析したりしないんですか? どういうところが良かったんだろう?とか。
しないです。「若いから許されたのかな」とか思って。「若くなくなったら、やばいな」とも思うんですけれども、今から考えても仕方ないですからね。「若い内、今の内に、笑ってごまかしておこう」「許される内に許されておこう」と。そんな感じなんです。
――すごいですね。本当に、すごいです。
すごいですか?(笑)
――すごいですよ。純粋に、憧れました。「こんな人になりたいな」って。
あはははは(笑)。
■嫌なことがあったら、「1年後にどうなっているかな」「笑い話になっているかな」って考える
――ちょっと最後に、アドバイスをいただければと思うんですが、そうやって生きるコツみたいなものはありますか? 考え方のコツとか、切り替えのコツとか。切り返しのコツでもいいんですけど。
なんですかね。嫌なことがあったら、「1年後にどうなっているかな」って考えるようにしています。それが笑い話になっているなら、嫌なことも仕方ないかと思うんですよね。
――おお、そういう視点を持つことで、気持ちを切り替えるんですね。勉強になります。
あと、辛いことがあったとしたら、「成長のチャンスだ」って思っちゃうんですよね。ちょっと自分でも気持ち悪いんですけど、「ふふふ」って。忙しくて大変だと思っていた時期もあったんですけど、でもその時期があったから、今すごく限られた時間の中で仕事ができるようになったんですよね。そういう意味では、あの時間が大事だったんだ、と思えるので、「さて、辛いことは、どこかに落ちていないかな」と探すくらいですね(笑)。
――(笑)。
「成長したい」って思うために、辛い目に遭ってみたりとか。同じことをするなら、辛い方を選んだ方が、成長できるって言うじゃないですか。私、まさに、その通りだな、と思っていて。もし選択肢があるならば、辛い方を選ぶようにしているかもしれないですね。
――すごいな。でも、それは本当の意味で辛い、というよりも、成長を実感できる辛さっていうことですよね。
そうですね。
――俯瞰していますね。
こういう話って、楽しいですね。今日はなんか楽しかったです。
――本当に笑いの絶えないお喋りの時間になりました。私も、元気をもらいました。
そうですか? だとしたら嬉しいです。ふふ、やっぱり、こういう話は楽しいです(笑)。