• 水野・井上・大石・伊藤・渡辺・人事Mgr(登場順)

LGBTの周りにいる人たち ~カミングアウトをどう受け止めたのか

今回は、LGBTの社員がカミングアウトをしている企業にお邪魔し、カミングアウトを受けた周りの人たちにインタビューを実施しました。自身の経験から就活コラム「LGBTの就活を考える」を執筆した渡辺さん。マイノリティであることを職場の人たちにカミングアウトし、「自分にとって働きやすい職場づくり」を実現した一人です。そんな渡辺さんの上司・部下・同僚たちは、マイノリティである事実やカミングアウトをどのように受け止め、見守ったのでしょうか。また、彼らへのインタビュー内容を聞いた渡辺さんにも意見を伺いました。

インタビューに応じてくれたのは、上司の水野さん、同僚の井上さんと大石さん、部下の伊藤さん、当時人事部マネージャーを務めていた方、そして、当事者の渡辺さんです。

インタビュー実施:2017年9月(らしくインタビュアー川上)

■印象は、「物腰柔らかな人」「自分のやり方を貫く人」「あっけらかんといろいろなことを話す人」

まずは、渡辺さんとの関係性と第一印象を聞きました。

水野

営業部で渡辺さんの上司として同じチームで働いていました。渡辺さんはコミュニケーション能力が高く、頭の回転が速い、優秀な人材だと感じましたね。

井上

そよ風のように爽やかな人が入ってきたな、という印象でした。営業の同じチームに半年いた後、私が異動してからは渡辺さんにアドバイスする立場になりました。渡辺さんは他の人にできないことをできる力を持っている反面、他の皆とは違うやり方を貫く人だったがゆえに、周囲と衝突してしまうこともありましたね。

大石

同じ営業部にいましたが、私は人見知りなのでしばらく話しませんでした。周りと話しているのを見て、「あっけらかんといろいろなことを話す人」という印象を持ちました。同僚を介して少しずつ親しくなり、渡辺さんから積極的に話しかけてくれたこともあって、今では仲の良い同僚の一人になっています。

伊藤

新卒として入社した時のOJTトレーナーで、夏に渡辺さんが異動するまで、ずっと隣の席で面倒を見てくれました。物腰柔らかで、面白い人だなーという感じでした。人との距離をつめるのがすごく早い、気さくな方です。

■状況を選びながらも、明るく軽いカミングアウト

渡辺さんがマイノリティであることを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

水野

ごく自然な流れで、自身のセクシュアリティについて話してきましたね。確か、周囲には誰もいなくて、私と渡辺さんだけでした。とは言え、重苦しい雰囲気はなく、明るく軽い、いつもの渡辺さんのテンションのままのカミングアウトでした。私の周りでマイノリティだと明言した人は初めてだったので、驚いたことは確かです。

井上

仕事中、渡辺さんからダイバーシティ関連の業務についての相談を受けている時だったと思います。「僕、彼氏がいるんですよ」と言われて、「あ、そうなんだ」って(笑)。私は前職でも、ゲイやレズビアンであることをカミングアウトしている同僚がいたので、渡辺さんに打ち明けられても衝撃はありませんでした。

大石

仕事帰りにふたりで飲みに行った店でカミングアウトを受けました。これまでの人生で遭遇したことがなかった場面なので、「あぁ、本当にそういう人がいるんだな」と思ったのを覚えています。「まだ社内でも数人にしか伝えていない」と言っていたので、彼なりに他のメンバーの目が気になっていたのかもしれませんね。

伊藤

実は、先に別の人から聞いていたのですが、「ふーん」という感じでした。本人から直接聞いたのは、職場ではなくオフの時間です。仕事の帰りに一緒に食事をしたお店で、「実は同性のパートナーがいるんだ」とお聞きしたのですが、私は「あ、そうなんですね」と返して、その話題は終わりました。

■自身の考え方や性格、これまでの経験で異なる、人それぞれの受け止め方

みなさんが、渡辺さんのカミングアウトをどのように受け止めたか訊ねました。

水野

身近にLGBTである人がいるとわかって、興味や関心が芽生え、もっと話を聞いてみたいと思いました。カミングアウトと同時に「パートナーと一緒に住んでいます」という話もしてくれたので、良くも悪くも深く考えずに興味本位でいろいろなことを質問しました。渡辺さんは率直に答えてくれましたが、それは彼の人柄のなせる業だと思いますね。打ち明けてくれたのに、こちらからの質問には「すみません。それは答えられません」と切り返されたら、ショックだったと思います。「言ってきたのに訊いちゃダメなのか」と(笑)。

井上

私は前職の業務の中で、「なんかよくわからないけど、LGBTっていうトレンドに敏感で、おしゃれな人達がいるんだ」という認識を先に持っていました。同僚に対しても偏見や抵抗を持つことはなかったのですが、正しい知識の前に、ただただポジティブなイメージを抱いてしまったんですよね。渡辺さんのカミングアウトは、私だけでなく当社のダイバーシティ推進の大きな転機だったと思います。渡辺さんによる社内勉強会などでLGBTに関する正確な知識を初めて学び、大変な思い、困りごと、傷つく場面などを改めて知りました。

大石

拒否感がなかった代わりに、「よし! 受け止めるぜ!」という気持ちもなかったですね。私は良くも悪くも、そこまで人に興味がないんです(笑)。干渉もしなければ、批判もしない。自分が渡辺さんの恋愛対象になった場合は、人生に深く関わってくるので真剣に考えなければいけないと思いますが、友人関係ですから「別に」という感覚でしたね。当時はまだ全社的にオープンにはしていなかったので「きっと誰かに言いたいんだろうな」という気持ちは伝わってきました。お酒の席で渡辺さんの話に耳を傾けたこともあります。

伊藤

私の反応はドライすぎたかなと思っています。打ち明けてくれた渡辺さんはどう感じたんだろう(笑)。ただ、私の中で「渡辺さんは、渡辺さん」という気持ちは変わらないし、「面倒を見てくれるいいお兄ちゃん」という印象もそのままでした。「この人だから、一緒にお仕事したい」「この人と関わっていきたいのは、この人が、こういう人だから」っていうシンプルな思いがあるだけで、少し乱暴な表現ですが、相手がLGBTかどうかはどうでもいいんですよね。「トマトが好物です」「私はひとりっ子です」という事実と同じようなものです。

■カミングアウトで、周りの人はこう変わった

渡辺さんのカミングアウト以降、自分自身の考え方などに変化を感じているか、語っていただきました。

伊藤

言葉の選び方や表現に、より気をつけるようになったかなと思います。彼氏、彼女ではなく、恋人、パートナーという表現に変えていこう、とか。これまで無意識に『男らしさ』『女らしさ』を判断してしまっていた感覚はあります。そんな無意識の集合体がカミングアウトを難しくしている現実があり、それを解決・解消していくには時間がかかるのでしょうね。LGBTは急に増えたわけではなく、昔から普通にいたと思うんです。それでも皆が「いろいろな人がいたっていいよね」という感覚になるのは、まだ先のことだろうなぁ、と感じます。私自身、今まで人生の中で、LGBT、性的マイノリティの人には会ったことがありませんでしたから。

水野

彼は過去に女性ともお付き合いをしていた経験があると聞いたので、男女どちらの立場でも話ができ、理解できたりするのかな、と思うようになりました。当時の私たちのチームが抱えていた営業先のお客様は、男女を問わず幅広い年代の方々でした。渡辺さんはどんなお客様に対しても、それぞれの視点で物事を考えられ、対応もうまい人という印象が残っています。それは彼の個性でもあり特性ですね。きめ細やかな対応については、お客様からの評価も非常に高いものでした。それは彼がLGBTだから、男性や女性の立場に立って提案し、親身になってお客様の話を聴くことができたからなのではないかと思いますね。

ちなみに、この水野さんの発言については、渡辺さんはすかさず水野さんにツッコミを入れたそうです。

渡辺

あくまでも個人的な意見ですが、「LGBTだから男女どちらの気持ちもわかる」という考え方は、違うと思うんです。実際に、よくそう言われます。そう捉える人も確かにいるだろうけれど、それだけじゃないと思っています。私が営業として意識していたのは、一人の人として、変に相手に共感したり決めつけたりしないということ、相手の話を想像力を豊かにして聞くことでした。私はこれは自身のセクシャリティではなく、努力して身につけたスキルだと思っています。水野さんにそう伝えたら、「……せやな!」って(笑)。受け止める力の大きい方なので、「そうか、俺もそこにバイアスがあるんだな」と、すぐ気づいてくださいましたね。

引き続き、皆さんのお話です。

井上

渡辺さんのカミングアウトから1年後くらいに、中途入社してゲイをカミングアウトした方がいました。私は彼と同じオフィスで働いていたんですが、私自身も、周りの社員も、渡辺さんの発信していた知識や情報から、どんな風に受け入れるのが良いのかわかっていたような気がしますね。プライベートの話題が出やすい飲み会の席などでも、意図せず「腫れ物に触らない」空気になるのはおかしいと感じて、いたって普通の話題として恋人の話を振るのもアリなんだな、ということも実感しました。

一方で井上さんはこんな場面も経験していました。

井上

管理職によるアウティングの場に遭遇したこともありました。その方は、まだ渡辺さんのセクシャリティを知らない第三者に「実は渡辺ってさ~」と話してしまったんですね。私は心の中で「あら、それって言っちゃっていいのかしら」と思いながら、聞き手の一人として同席していたんですが、今考えると、もっと能動的に「それは、本人が言っていいと許可している内容ですか?」と突っ込めたら良かったのかな。当時は「この人は、そんなに大きく衝撃を受けたのね」と思った程度だったんです。でも、”アウティング”というリスクを学んでから「あの時、私はもっと言うべきだったんだわ」と気づかされましたね。

このアウティングに対して渡辺さんはどう感じているのでしょうか。渡辺さんご本人に、お話を伺いました。

渡辺

井上さんが気づいてくれたことが嬉しいです。上下関係もある中で「それはダメですよ」と言える人はなかなかいませんからね。こんな場合は戦う姿勢を見せるのではなく、例えばユーモラスに、人差し指を口に当てて大きな目で「シーッ!」と遮ってもいいと思うんです。お酒の席なら「あれ、お酒が足りないじゃないですかー」とごまかすなど、コミュニケーションの幅を持って楽しめたらいい。私なら相手を酔わせて、つぶしにかかるかもしれませんけどね(笑)。その場で止めるか、後で啓蒙するかという点については、今後アライ(Ally。LGBTの理解・支援者)の立場の方々がいろいろと試せるのではないでしょうか。

戦わないタイプのアライとしては大石さんが好例のようです。

大石

お酒に酔った渡辺さんから、前の職場で悲しかった話などをよく聞きました。いろいろな価値観の持ち主がいるように、LGBTに対してもいろいろな意見を持つ人がいるでしょう。でも、LGBTにネガティブな感情を持つ人に対して「それはおかしいですよ!」と、主体性を持って積極的に働きかけたり、その人の考え方を変えたりできる力は、私にはないと思うんです。

それなら仲の良い同僚であり友人として、大変なことや、辛い思いもあるだろうと理解はできるので、せめて話を聞いてあげたり、サポートしてあげたり、愚痴や不満を吐き出せる場を作ってあげられたらいいのかな、と思っています。でもまぁ、LGBTだからというよりも、仲の良い友達、同僚と飲みに行ってLGBT関連のネタが話題に上ったら話を聞く、くらいのことですけどね。

■いよいよ全社に向けて公表することに

LGBTをカミングアウトしている人がいる職場について、具体的にイメージできるようなお話も伺えました。渡辺さんが全社員を前にして(オンラインで全国の支社まで)カミングアウトした日のことを、井上さんはこう語ります。

井上

渡辺さんが自身のことをオープンにして、全社に向けて発信したことも含めて、いろいろな気づきを与えたことは大きかったと思います。私も渡辺さんのカミングアウトの場にいたんですが、マイクを持った渡辺さんが「今、心臓バクバクしているんですけどね」と切り出すと、そのバクバクが伝わってくるような気がしていました。私は「渡辺さん! よくやった! よく言った!」という感じで(笑)、すごく勇気の要ることを成し遂げたんだろうなと思いました。

また、大石さんはその日のことを振り返り、組織の特徴を分析しました。

大石

私もその場に居合わせたんですが、ある程度、彼が個別に打ち明けていたこともあってか、特段、組織全体で大きな変化はなかったように思います。後日になって「ねぇねぇ、渡辺さんって“そういうこと”だったんだね」ってワイワイする雰囲気もなかったです。これは、柔軟性の高い人が多い組織だということも、ひとつの要素かもしれません。「そういう人もいるんだね」くらいに受け止めた人がほとんどだったのかもしれませんね。

水野さんは、カミングアウトの影響は、仕事の質という側面にも及んでいると言います。

水野

弊社はセミナーや研修をメイン事業にしている会社だから、というのもありますが、彼の全社的なカミングアウトが、彼だけでなく、全社的な仕事のしやすさ、成果の出しやすさを後押ししたと思います。例えば、顧客からのLGBT関連の問い合わせに対する渡辺さんの指摘やアドバイスは、私を含めて他の営業メンバーには考えもつかない視点からの内容ばかりでした。彼のダイバーシティに対する意識やアンテナの高さは、組織の提案力や営業力にも役立っていると思います。

■「世の中には自分と価値観の違う人がいる」だけのこと

渡辺さんのカミングアウトが、自身のプライベートでの言動・考え方にも影響を与えたと語ってくれたのは井上さんです。

井上

学生時代の友人の中に、とってもきれいな女性がいるんですが、なぜか彼女には結婚の話が出ていませんでした。皆で集まると「まだ結婚しないの? どうして? もったいないよ」とか、彼女が指輪をしてきた時には「彼氏からもらったわけじゃないのに指輪なんてしていたら、ますます男が寄ってこなくなっちゃうよ」なんて言っていたんですよね。

しかし、渡辺さんの話を聞いた後、井上さんはこう考えるようになりました。

井上

彼女に対して余計なことを言っちゃったのかな、必ずしも男の人を好きになるとは限らないよね、と。別の友人たちとそんな話をしている時に、「実はうちの会社でもLGBTをカミングアウトした人がいてね」という話になることもありました。

伊藤さんは、カミングアウトした渡辺さんとの関係に限らず、人そのものに対する接し方について、自身を観察してこう言います。

伊藤

私にとっては、LGBTの渡辺さんも含めて、「自分と価値観の違う人がいる」というだけの話です。納得や同調をする必要はないと思っています。「あ、あなたは、そうなんだね」「私はこっち側の人間なんだよね」という感じなんですよ。その辺は私、すごくドライなんでしょうね(笑)。

ご両親が「男女間でも友人関係が成り立つ」という考えの持ち主だという伊藤さん。

伊藤

私もその考え方を受け継いでいて、自分の交友関係を考えても男性・女性というくくりはなく、みんな“私の友人”なんです。

渡辺さんは、伊藤さんのような考え方の持ち主が、もっと注目を浴びたらいい、と思っているそうです。

渡辺

伊藤さんのように、「別にどっちでもいい」という人の存在が大事なんだと思うんです。私の周りのLGBTの中には、あっけらかんとカミングアウトする人もいれば、「職場の人は、どう思っているんだろう」と気にしている人もいます。どうしても組織のLGBT問題は、「経営層はどういうスタンスなのか」とか、「設備は整っているのか」とか、そういった大きな話になってしまいがちです。

でも、現場で働くメンバーの「LGBTでも、そうでなくても、気にしない」「仕事仲間として気持ちよく仕事ができればいい」というスタンスが、実はダイバーシティ推進には大きな意味を持つのではないかと考えています。企業の担当者さまとお話をすると、「うちの会社は、まだまだLGBTの受け入れは難しい…」「多分、抵抗や戸惑いを示す人が多いと思う…」と言われることもありますが、私はいつも思っています。「きっと御社の現場にも、当社の伊藤のように、”別に気にしない派”がいるはずですよ。そういう人の声を集めましょうよ」って。

■人事が思っていたこと/LGBT当事者が考えていたこと

組織の一員として、人事は渡辺さんの存在をどのように受け止めていたのでしょうか。ここからは、当時、人事部でマネージャーを務めていた方のお話をご紹介します。

■「人事としてどうしたらいいだろう」

人事部マネージャー(以下:人事Mgr)

ある時期、社長と2人で、「当社もダイバーシティを意識すべきでは」という議論をしていたんですが、そこで「うちにもLGBTがいるしな」と言われて、「あ、そうなんだ」と。そこで初めて、当社にはLGBTの社員がいる、という事実が明確になったんですね。なんとなく「たぶん、彼だろうな」とピンときたのが、渡辺さんでした。これは前職での経験も含めて、人事を長くやっている勘かもしれませんね。

「うちにもLGBTが」と言われた時は、「人事としてどうしたらいいかな」と思ったのが正直なところです。というのも、前の職場にいたある社員のことを、まず思い出したからでした。その方はいわゆる”ギャル風”の女装をする男性で、正直に言えば清潔感にも欠けており、マジョリティが考える「普通」の概念からは外れていたんですね。周りは「いい年をしたおじさんが、いかがなものか」という違和感を抱き、「ビジネスにはふさわしくない」と白い目を向けていたことも事実です。

その点、渡辺さんは見た目に違和感もなく、周りの目を心配することはありませんでした。それでも、ダイバーシティというくくりの中の、さらにLGBT――当時、まだ世の中でも理解が進んでいない課題――について、人事が何をするべきなのか、答えがわからずにいたんです。

■声高になるほど反発も。人事は調整役に徹する

人事Mgr

当社としては既に、経営者からの発信で、LGBTフレンドリーであることを公言し、採用活動でもそれをうたっていたんですよね。その中で、渡辺さんから「当社は、LGBTへの理解も対応もまだまだ不十分だ」という指摘を受けていたので、何かやらなければいけないんだな、ということはわかっていました。

結局「勉強会をしましょう」と渡辺さんから提案してくれて、動き出したという感じでしたね。「新卒でLGBTが入ってくる可能性があるのに、このままではまずい」という彼からの提言で社内セミナーを企画することになり、彼の主導で情報発信したところからスタートしていきました。

私は組織において「バランスをとる」のが人事の役割だと思っているんです。やはり彼がLGBTやダイバーシティを大きな声で主張すると、反発とまではいかなくとも違和感や疑問を抱く人が出てきます。それは仕方がないことです。そこで私は人事としてそこに介入し、皆があずかり知らないところでバランサーとして調整していく役割を担っていました。

LGBT関連の対応については、渡辺さんの見えないところで、いろいろとバランスをとっていたと自負しています。もちろん、彼の言っていることは基本的に間違っていないので、それが受け入れられないのであれば、受け入れられない側に問題があります。別に賛同はしなくていいのです。でも、そういう人がいることを受け入れられないのは当社の考えと異なる、という方針を私は人事として推進していきました。

■「よくわからない」がダイバーシティ推進を阻む

人事部のマネージャーのお話を受けて、渡辺さんも感じたところを語ってくれました。

■面倒くさい存在だったかもしれない

渡辺

彼が前職で、“特殊”と感じるLGBTの方に出会っていたことは知りませんでした。今になって、いろいろと心配してくれていたことがわかります。

当時、2015年、世の中がダイバーシティの成功事例を待っているような時期だったので、当社の人事はどう動くのか、実験して見てみようと思っていたんです。1か月様子を見てみようとか、課題が放置されているように見えたら自分から突っつきに行くとか、意見を求められたら耳が痛いであろうリスクの側面を伝えるとか……、正直、人事部にとって面倒くさい存在だったと思います。

でも、客観的に見て、知りたかったんですね、企業の人事がどうこの課題に取り組むのか、ということを。

■よくわからない人のために開いた勉強会

渡辺

自分から提案して何度かダイバーシティの勉強会をしましたが、その勉強会は私のためにではなく「LGBTがよくわからない人」のためのものにしよう、と思っていました。「私、あるいは私たちLGBTは、こんな大変な思いをしているんです」というものにはしたくないな、と。もっとビジネスパーソンとして、会社組織として知るべきことがあるだろう、と思っていたんです。

それこそ会社としてLGBTフレンドリーをうたっているのに、営業がお客様先で「よくわからない」とは言えませんよね。特に当社は人材育成や組織変革をビジネスにする会社なので、営業やコンサルタントが様々な企業から“特殊”なケースを相談されることもあるはずです。もちろん、当社の中で“特殊”なケースに遭遇することもありえます。だからこそ組織が統一した見解を持つこと、一人ひとりに関わってくるダイバーシティを肌で感じること、自分自身の発言に責任を持つことの意味をもっと考えなければいけない、ということを考えていました。

■企業を作っているのは人

渡辺

ダイバーシティというと、ついつい企業体制や制度づくりの話題になりがちです。でも、企業を作っているのは人です。ダイバーシティって、人の問題なんです。

極論をいえば、その人たちの中に、LGBTを受け入れられる人とそうでない人がいてもいいのではないでしょうか。今の時代、それを公言することに伴うリスクはありますが、一個人としての私は、そう思っています。今回のインタビューで少なくとも当社には「気にしない」という人がいたことがわかったんですが、実はそれが組織にとってとても大事なのではないかと思っています。

きっとインタビューを受けていない人の中には、「正直、渡辺さんのカミングアウトには引いたわー(苦笑)」っていう人もいたと思うんです。私という個人については、私はそれはそれでいいと思っています。人が何をどう感じるかは自由ですからね。

職場はビジネスシーンなので、そういうメンバーとは”仕事”や”成果”でコミットできればいい。そういうことも含めて、みんながもっと自分の意見や考えを口に出して、互いに「そんなことを考えていたんだ」「そんな価値観を持っていたんだ」と知ることができて、それが働きやすさやチームの成果をもたらしたらいいですよね。私は、そんな風に考えています。

それにしても、私は上司や同僚、部下に恵まれましたね(笑)。嬉しいし、とても幸せなことだな、と思います。

就活生の持つ"自分らしさ"と、
企業で働く社員の"自分らしさ"をマッチング

「らしく」は、「自分らしく働く、を応援しよう」から命名した、新しいサービスです。「らしく」は、就活生の持つ”自分らしさ”と、企業で働く社員の”自分らしさ”をマッチングさせ、就活生の皆さまに、満足度の高い就職活動を実現していただくことを目指しています。

インタビュー

さらに見る